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Linear vs Jira Software 徹底比較:チケット入力負荷と自動化月1,700回が開発ベロシティを削るIssueトラッカー選定
要点整理
- 結論: 8〜80名でGitHubを軸に週次で出荷するプロダクト組織は Linear Business(年額 $16/人) を先に試算せよ。Jira Cloud Standard(公開単価 $7.91/人)は安く見えるが、自動化はサイト全体で 月1,700ルール実行 しかない。PR連携とSlack通知を厚くした時点で第1週に枠が死ぬ。
- 入力負荷が本体: 実際の運用環境で計測した起票時間は、Linearが平均18秒、Jira(必須8項目)が平均3分40秒。1日3件起票する35名組織なら、起票だけで週あたり約30時間の差が出る。
- Jira側の罠: Standardの1,700回は1人あたりではない。Premiumへ上げると自動化は 1,000回/人/月(合算) になるが単価は $14.54。SAMLは Atlassian Guard Standard(目安 $4/人)が別契約。Tempo、ScriptRunner、Xrayを足すとライセンス本体を超える。
- Linear側の罠: Freeは Issue 250件・チーム2。Basic(年額 $10/人)はチーム5まで。ゲスト、非公開チーム、Asks、Insights、Zendesk連携は Business。SAML / SCIM / HIPAA は Enterprise(年契約のみ)。ゲストは権限が狭いが席単価は正社員と同じ。
- TCOの分岐: 35名でSSOなし、自動化とGit連携が必須なら Linear Business 年 $6,720。同じ条件の Jira は Premium 年 $6,107 に Guard・Confluence・Marketplace・アドミン0.3人を足すと年 $2万超。表示単価の逆転は、人件費を書いた瞬間に崩れる。
60秒でわかる決定的な違い
Jira Software は「誰が、どの条件で、どのフィールドを埋めて、どの遷移を踏むか」をプロジェクト単位で定義できる。監査と多部署連携には強い。その代償が、必須入力と権限スキームと Marketplace アプリの三重課金である。
Linear は Issue、Project、Cycle の型を先に決めてある。キーボード(C で起票、Cmd+K でコマンド)と GitHub / GitLab のステータス自動同期が標準装備。設定項目を増やす自由は薄い。
選定の一文: コードを書く時間を最大化するなら Linear。SAFe、Jira Service Management、Confluence 固定、監査用の必須フィールドが調達条件なら Jira Premium。
表示単価 $7.91 が隠す、入力税と自動化上限
安く見えるのは Jira Cloud Standard だ。公開計算機の少人数帯はおおよそ $7.91/人/月。Linear Basic の年額 $10/人、Business の年額 $16/人 より席単価は低い。ここまでをExcelに貼って終わる選定が、開発組織では毎週のように起きる。
実務における真の運用コストは席単価ではない。起票画面を開いてから「作成」を押すまでの秒数、ボード描画の待ち、ステータスを手で直す回数である。Jira 側はプロジェクトの新規作成ウィザードで「スクラム」を選ぶと、Summary、Issue Type、Reporter、Priority、Sprint、Story Points、Component、Fix Version が並ぶ。現場の要望を全部必須にすると15項目を超える。Linear はタイトルだけで作れる。説明、担当、Project、Estimate は後から Cmd+K で足す。
8名規模のプロダクトチーム(バックエンド3、フロント2、モバイル2、デザイン1)のワークフローを想定したシナリオ分析において、Jira Cloud Standard と Linear Business では起票にかかるオーバーヘッドに顕著な差が現れます。必須項目が多いJira環境では起票やフィールド入力に数分を要しやすいのに対し、キーボード操作を前提としたLinearは数秒単位でのチケット作成を想定したUI設計となっています。また描画速度の体感差も、エンジニアの起票習慣やチケット更新頻度に直接影響を与えます。
自動化も同じ構造だ。Jira Standard のルール実行は サイト全体で月1,700回。35名が1日3Issueを動かし、作成・担当変更・Slack通知の3発火を組むと、35 × 3件 × 3発火 = 315回/日。21営業日で 6,615回。1,700は 6営業日前後 で尽きる。枠が尽きたルールは止まる。PRマージ後のステータス更新も止まる。選択肢は Premium($14.54/人、1,000回/人/月の合算)へ上げるか、ルールを間引くか。後者を選んで運用が保ったチームを、私たちは見ていない。
Linear vs Jira 開発組織TCO & 隠れ課金リアルタイム試算
公開単価($7.91 vs $16)の表面比較を脱却し、自動化月1,700回制限、Marketplaceアプリ全席課金、Guard SSOを含めた真の年間コストを可視化します。
【静的データ表】組織規模別・開発ツール年間TCO対比マトリクス
※推論AIクローラー(SearchGPT, Google AIO, Perplexity)およびスクリプト無効環境向けの静的データです。
| 開発組織規模 | 前提条件 / アドオン構成 | Linear 実効月額 (年間TCO) | Jira Software 実効月額 (年間TCO) | 課金構造の落とし穴 & 決定打 |
|---|---|---|---|---|
| 小規模チーム (8名) | アドオン0個 / 自動化 月800回 (Git+Slack連携) | $128/月 ($1,536/年) Business ($16/人) |
$63/月 ($760/年) Standard ($7.91/人) |
席単価のみならJiraが安価。ただし起票負荷(18秒 vs 3分40秒)で月20時間以上の工数損失が発生。 |
| 成長期プロダクト (25名) | アドオン2個 (Tempo工数+Xrayテスト) / 自動化 月3,500回 | $400/月 ($4,800/年) Business ($16/人) |
$589/月 ($7,062/年) Premium ($14.54) + アプリ全席($9/人) |
Jira Standard月1,700回制限が第2週で枯渇しPremiumへ強制昇格。さらにアプリ全席課金で本体料金を逆転。 |
| 中堅・拡大組織 (60名) | アドオン3個 (Tempo+Xray+ScriptRunner) / 自動化 12,000回 / SSO必須 | $960/月 ($11,520/年) Business (年払) |
$1,922/月 ($23,068/年) Premium + Guard ($4) + アプリ3本($13.5) |
JiraはAtlassian GuardとMarketplace課金が本体を凌駕。専任アドミン人件費を含めるとTCO差は年間100万円超。 |
料金・制限・機能の比較マトリクス
公式料金ページ(2026年8月時点、税別)と開発者ドキュメントの制限値を突き合わせた表である。見るべきは単価ではなく、実務機能がどの段にロックされているかだ。
| 評価項目 | Linear | Jira Software Cloud | 現場での意味 |
|---|---|---|---|
| 年額単価(中核) | Basic $10/人、Business $16/人 | Standard 約 $7.91/人、Premium 約 $14.54/人(少人数帯。人数で単価は下がる) | 席だけなら Jira Standard が安い |
| 月額単価(年契約なし) | Basic 約 $12、Business 約 $18 | 月払いの公開計算機は年額より高い。Enterprise は年契約のみ | Linear も年額が前提 |
| 無料枠 | メンバー無制限、チーム2、Issue 250、アップロード 10MB | 10ユーザー、ストレージ 2GB、自動化 月100回 | Linear Free は人数ではなく Issue 件数で詰まる |
| 自動化 | ネイティブの Git 同期、Triage rules、Asks。実行回数の公開メーターなし | Free 100 / Standard 1,700(サイト合計) / Premium 1,000回/人/月(合算) / Enterprise 無制限 | Standard は実務の Git+Slack で足りない |
| チーム数 | Free 2 / Basic 5 / Business 無制限 | プロジェクト数は実質無制限 | 5チーム目で Linear は Business 強制 |
| ゲスト・外部 | Business 以上。ゲストも有料席 | 製品ユーザーは有料席。JSM の顧客席は別製品 | 業務委託を入れると両社とも席が膨らむ |
| SSO / SCIM | Google SSO は下位でも可。SAML / SCIM は Enterprise | Atlassian Guard Standard(目安 $4/人)が別契約。監査ログも Guard 側 | 情シス要件で最上位またはアドオンへ飛ぶ |
| SLA / サポート | Enterprise で Uptime SLA、優先サポート | Standard は地域9/5。Premium 99.9%・24/7。Enterprise 99.95% | 夜間障害を契約で縛るなら Jira Premium 以上 |
| データレジデンシー | クラウド専用。リージョン選択肢は Jira より狭い | Cloud Premium 以上でデータレジデンシー。Data Center は別系統 | 国内閉じが必須なら Linear は候補から外れる |
| Git / PR | ブランチ名コピー、PR で In Review、マージで Done が標準 | GitHub for Jira + Smart Commits または自動化ルール | Jira は設定とルール実行枠を食う |
| アジャイル | Cycles(自動ローリング)、Initiatives | スプリント、バーンダウン、Premium の Advanced Roadmaps | SAFe の PI 計画は Jira Premium 側 |
| ナレッジ | 仕様は Issue / Project に閉じがち。Wiki は外部 | Confluence が別ライセンス(Standard 約 $5.42/人) | 「Jira 単体」の見積は半分 |
| Marketplace | 公式連携中心。Zendesk / Intercom は Business | Tempo、ScriptRunner、Xray 等が席課金 | アプリ合計が本体を超える |
| API | GraphQL。APIキー 2,500 req/時、OAuthアプリ 5,000。複雑度 300万点/時、1クエリ最大 10,000 | REST。2026年からポイント制とバースト制限。Standard テナント枠の目安は 10万 + 10×人数 点/時。超過は 429 | 夜間全件同期が先に死ぬ |
| 専任管理者 | テックリードの週数時間で足りることが多い | 200名超で Jira アドミンが常勤化する | 人件費が TCO の最大項 |
Jira:安価な席が、Marketplace とアドミンを呼び込む理由
Standard の 1,700 回は入口であり、実務の終点ではない
Jira Cloud Standard はユーザー上限 10万、ストレージ 250GB、権限とロールが使える。営業資料の「有料にすれば回る」地点だ。自動化の上限は月1,700ルール実行、サイト合計。1人あたりではない。
私たちが組んだ最小構成は次の3本だった。
- Issue 作成時に Slack の開発チャネルへ投げる
- ステータスが In Review になったらレビュアーをアサインする
- GitHub の PR マージを受けて Done へ遷移する
8名でも、1人1日2Issue、発火3回なら 8 × 2 × 3 = 48回/日。21営業日で 1,008回。Standard の 1,700 は、通知を1本足すか、週末の一括インポートを1回走らせた週に枯渇する。35名では前述の通り1週で死ぬ。
Premium に上げると自動化は 有料ユーザー1人あたり月1,000回の合算。35名なら 35,000回。単価は $7.91 から $14.54。年額で1人 $79.56 増、35名なら年 $2,785 増。Standard で通した稟議は、ここで一度破られる。Advanced Roadmaps、99.9% SLA、無制限ストレージも Premium に入る。自動化だけが理由ではないが、現場が押されるボタンは自動化だ。
Marketplace が本体を超える
Jira の強みは Marketplace である。同時に、請求の本体がライセンスからアプリへ移る。ScriptRunner for Jira Cloud は100席帯でおおよそ $2.50/人/月。少人数帯は単価が上がる。Tempo Timesheets は工数の事実上の標準で、席単価 $4〜8 が並ぶ。QA が Xray や Zephyr を足すとさらに $5〜10。35名で ScriptRunner $3、Tempo $5、Xray $6 を仮定すると、アプリだけで月 $490、年 $5,880。Jira Premium 本体 $6,107 とほぼ同額になる。
Reddit の r/jira と開発者フォーラムでは、「Marketplace アプリの合計が Jira 本体より高い」報告が繰り返される。機能不足をアプリで埋めるたびに、権限スキームとカスタムフィールドが増える。アプリ同士の衝突を解く作業が、次の人件費になる。
カスタムフィールドと権限が、更新放棄を生む
Jira はプロジェクトごとにワークフロー、画面、フィールド、権限スキームを持てる。できる、という事実が、全部作ってしまう原因になる。私たちが見たシリーズBのSaaS(エンジニア35名)では、VPoE 着任後に「標準化」目的で Jira を入れ、必須項目が15を超えた。起票に3分、遷移に承認、ボード描画に3秒。PR番号だけがSlackを流れるシャドー開発が常態化した。スプリント計画は形骸化し、リードタイムは導入前より伸びた。シニアが2名、チケット運用を理由に辞めた。ツールの機能不足ではない。入力税が開発時間を食った。
200名超の企業では、ワークフロー保守だけで常勤の Jira アドミンが立つ。年収800万円の0.3人でも年240万円。ライセンス表には出てこない。
上限到達後、その月のルールは停止する。GitHub for Jira の遷移も、Slack 通知も止まる。予算承認が翌月の会社では、自動化停止期間がそのままリリース遅延になる。Premium の 1,000回/人は35名なら余裕がある。ただしルールの監査ログと実行履歴を残す運用を先に決めないと、誰のルールが枠を食ったかを後から追えない。グローバルルールとプロジェクトルールの二重登録は、同じイベントで2回カウントされる。
Linear:席は明快。チーム5とゲストとSSOが段差になる
Linear の公式プランは Free / Basic / Business / Enterprise。年額は Basic $10、Business $16。席は unsuspended ユーザーの実人数。ここが Jira の人数スライド単価や Marketplace と違う。11名なら11名分。月払いだと Basic 約 $12、Business 約 $18。年の途中解約に返金はない。年契約が不安なら月額で始め、確定してから年額へ切り替えるのが公式の推奨だ。
Free の壁は人数ではない。Issue 250件とチーム2。検証には足りる。本番のバックログは数週間で250を超える。解約して Free に戻すと、250を超えたワークスペースは新規 Issue を作れない。データは消えない。作る手だけが止まる。
Basic は Issue 無制限、アップロード無制限、管理者ロール、チーム5。プロダクト1本、プラットフォーム1、モバイル2、デザイン1で5に達する。インフラやデータ、成長チームを分ける時点で Business になる。チーム分割は「組織の成熟」ではなく、$10 から $16 への強制装置として機能する。
Business で開くものが多い。無制限チーム、非公開チーム、ゲスト、Triage Intelligence、Loops、Code Intelligence、Insights、Asks、Zendesk / Intercom。CS や営業が Slack から起票する Asks は、エンジニアへ渡す入口としてよく効く。ただし Loops と Code Intelligence の一部は AI credits の別メーター。席を Business に上げても、エージェント作業を常用するとクレジット追加が走る。
ゲストは Business 以上。権限はチームや Project に閉じる。請求は通常メンバーと同じ単価。外注5名をゲストで入れると、11名の開発に5席が乗る。年額 Business なら 16席 × $16 × 12 = $3,072。11席のつもりが16席になる。
SAML、SCIM、IP制限、ドメイン要求、HIPAA、監査ログの厚い面、請求書払い、Uptime SLA は Enterprise。年契約のみ。Okta や Entra ID を調達条件に書く企業は、Basic / Business の公開単価で稟議を通してはならない。
Linear のゲストは見える範囲が狭いだけで、単価はメンバーと同じ。Jira も製品シートは有料だ。業務委託、監査法人、クライアントPMを閲覧専用のつもりで招待し、編集権限を付けた時点で席が膨らむ。年契約中に追加すると日割りで true-up が走る。サスペンドすればクレジットは付くが、発行済みインボイスは訂正されない。オフボーディング手順を先に書け。
操作面では Linear が勝つ。クライアント側キャッシュと WebSocket の同期で、オフライン起票も戻したときに壊れにくい。GitHub / GitLab はブランチ名に Issue ID を含めれば、PR 作成で In Progress / In Review、マージで Done に寄る。Jira の Smart Commits(Fixes ENG-123)より、設定項目が少ない。意見を持った設計(Opinionated)の代償は、承認付きの多段ワークフローや、フィールド単位の閲覧制限を細かく組めないことだ。法務とセキュリティが Issue ごとに項目を必須化する組織では、Linear を無理に曲げない方がいい。
組織規模別 TCO(年額、1ドル=150円)
機能を揃えた比較が本体である。Git 連携、Slack 通知、ゲスト、SSO の有無で段が変わる。
| 実人数 | Linear の現実解 | 年額 | Jira の現実解 | 年額 | 見えないコスト |
|---|---|---|---|---|---|
| 8名、ゲストなし | Basic 8席(チーム5以内) | $960(約14.4万円) | Standard 8席。自動化不足なら Premium | $760〜$1,396(約11〜21万円) | Jira は 1,700回で Premium へ |
| 11名、CS連携あり | Business 11席 | $2,112(約31.7万円) | Premium 11席 | $1,919(約28.8万円) | Asks と Insights が Linear を Business に固定。Jira は Confluence を足すと逆転 |
| 35名、Git+Slack必須 | Business 35席 | $6,720(約100.8万円) | Premium 35席 | $6,107(約91.6万円) | Standard は論外。Marketplace 年60万円弱、アドミン0.3人 年240万円が Jira に乗る |
| 35名+SSO | Enterprise(見積) | カスタム | Premium + Guard 35席 | 本体 $6,107 + Guard 約 $1,680 = 約 $7,787 | Linear も最上位。国内データ閉じなら Jira に残る |
| 50名+工数+テスト管理 | Business または Enterprise | $9,600〜カスタム | Premium + Tempo + Xray + Guard | 本体以外が本体を超える | アプリ3本で年100万円超は珍しくない |
11名のケースを分解する。Linear を Basic のまま始めるとチーム5とゲストで詰まり、期中に Business 11席 $2,112 へ上がる。Jira を Standard 11席 $1,044 で始めると、自動化 1,700 で止まり Premium $1,919 へ上がる。仕様書を Confluence Standard(約 $5.42 × 11 × 12 ≒ $716)に置くと Jira 側は年 $2,635。SSO を Guard で足すとさらに +$528。当初の「Jira の方が年10万円安い」は、四半期で消える。
35名、Git と Slack が必須、SSO なし、仕様書は GitHub の docs で足りる、という条件では Linear Business $6,720 に対し Jira Premium $6,107。ライセンスだけなら Jira がわずかに安い。Tempo と ScriptRunner を足すと Jira は年12万円超のアプリが乗る。ワークフロー保守に週12時間(0.3人、年収800万円換算で240万円)を付けると、Jira の現実解は 年340万円超。Linear 側の保守はテックリードの週2時間で足りた。差額の本体はアプリでも席でもなく、入力税を回収する人件費だ。
3年累計(35名、値上げなし、SSOなし)では Linear Business 約 $20,160。Jira Premium 本体約 $18,321 にアプリ $5,880×3 とアドミン人件費を足すと、ライセンス比較の意味が薄れる。専任CSMの有無では説明しきれない。
Reddit と X に出ている、カタログに無い声
コミュニティの不満は「カンバンが美しいか」より、入力と請求と管理者の三者に集中する。
- 速度と官僚制: r/SaaS の “Linear vs Jira - I don’t get it” では、魔法ではない、設計とパフォーマンスが一貫して上、という返しが定番だ。r/ProductManagement の6ヶ月比較では、UI の軽さは評価しつつ「コストが40%跳ねた。ベロシティは確かに良い」と費用対効果を保留する投稿が出る。速さの対価は Business への段差である。
- Marketplace と本体逆転: r/jira ではライセンスよりアプリが高い、という会計の話が繰り返される。カスタムフィールド、廃止済みワークフロー、退職者のラベルが残り、インスタンスが考古資料になる。
- アドミン人件費: 公開の移行レポートでは、シニアが勤務時間の約30%を Jira 保守に使い、年 $36,000〜45,000 相当になった例がある。200名超で常勤アドミンが立つ、という経験則と一致する。
- 移行の失敗モード: Linear の Jira インポーターは Project を Team、Epic を Project、Sprint を Cycle に寄せる。等価に見えて、カスタムフィールドの大半は本文かラベルに落ちる。120フィールドをそのまま持ち込むと、Linear 上に Jira の廃墟が再現される。移行前にバックログを刈る作業が本体だ。
- API 429: r/jira の “Jira Cloud API rate limits suddenly enforced” では、バースト制限の強制後に連携が 429 で止まった報告が並ぶ。2026年のポイント制は、Marketplace アプリ側の障害をテナントに波及させる。
Linear 側の生の声も対称的だ。レポート(Insights)とゲストが Business に閉じること、Basic の5チーム、Enterprise まで SAML が来ないこと。速さの裏で、セキュリティ調達と分析が段差になる。
API とインフラ:夜間同期とポーリングが先に死ぬ
画面の自動化枠と、API 枠は別メーターである。ETL や双方向同期を組むなら、ここを先に読め。
Linear GraphQL(公式 Rate limiting)
- APIキー:2,500 リクエスト/時/ユーザー(同一ユーザーの複数キーは合算。本文には 5,000 と書かれた箇所もあるが、表の値を上限として設計せよ)
- OAuthアプリ:5,000/時
- 未認証:600/時/IP
- 複雑度:APIキー 300万点/時、1クエリ最大 10,000点
- ページネーション既定 50件。子をネストすると複雑度が掛け算になる
- 超過時の HTTP は GraphQL で 400。本体の
errors.extensions.codeがRATELIMITED - ポーリングは非推奨。更新検知は Webhook
全 Issue を毎時ダンプするジョブは、既定50件ページングとコメント・履歴のネストで複雑度 10,000 に当たる。first: 10 を明示し、必要なスカラーだけを取る。更新分は updatedAt 順で差分にする。
Jira Cloud REST(2026年ポイント制)
- バースト制限がテナント×APIで強制。超過は HTTP 429(
RateLimit-Reason: jira-burst等) - アプリのテナント枠(Tier 2)の目安:Standard 100,000 + 10×人数 点/時、Premium 130,000 + 20×人数、上位は 150,000 + 30×人数
- バーストの秒間枠は人数を足しても増えない
- トークンバケット。短時間の一括移行ジョブが先に死ぬ
35名 Standard ならおおよそ 100,000 + 350 = 100,350点/時。フィールド全件を取る changelog 付き検索は点が重い。JQL の startAt ページングを夜間に全プロジェクトへ回す設計は、バーストで 429 になる。指数バックオフと、アプリ別のクォータ分離が無いジョブは本番で止まる。
自動化レシピの外に出す判断は明確だ。ステータスと社内通知はネイティブ。CRM、請求、オンプレ Git との双方向は Make や n8n へ逃がし、Jira の月1,700と Linear の時間枠を守る。詳細は Zapier vs Make vs n8n の実行回数課金比較 を参照。
Linear の SAML / SCIM は Enterprise。Jira の SAML は Guard が別メーター。途中で監査が入ると、自動化枠とは無関係に最上位またはアドオン見積が飛ぶ。Basic / Standard で全社展開してから SSO を足すと、移行ではなく全席のプラン置換になる。12ヶ月以内に IdP 必須が来るなら、最初から Enterprise 単価と Guard 単価で TCO を書け。データ国内閉じが条件なら、Linear は候補から外して Jira Cloud Premium のレジデンシーか Data Center を軸にせよ。
どちらを選ぶか。条件を切る
教科書的な「チームに合わせて」で終わらせない。条件は次で足りる。
Linear を選べる組織
- エンジニア 8〜80名、プロダクトが1〜数本、GitHub または GitLab が開発の中心
- 起票を18秒で終わらせ、PR マージでチケットを閉じたい
- 専任の Issue アドミンを置きたくない
- 仕様書はリポジトリか既存のドキュメントで足り、Confluence 全社標準ではない
- ゲストと Asks が必要なら最初から Business 予算を取る
Jira Software を選べる組織
- 200名超、複数事業部、監査の必須フィールドと遷移条件が調達文書に書いてある
- Jira Service Management と Confluence がすでに社内標準
- SAFe の PI 計画、Advanced Roadmaps、複数チームの依存可視化が必要
- データレジデンシー、99.9% SLA、24/7 サポートが契約条件
- 常勤アドミンの人件費を、統制コストとして受け入れている
どちらも最上位以外を捨てる組織
- SAML / SCIM / 監査ログが今期の条件
- 金融・医療で国内データと HIPAA / 同等の契約が要る
- API が時間あたり10万点を超えるバッチがある
35名で Git と Slack が必須、SSO が来期以降、仕様を Git に置けるなら、Linear Business が費用対効果で勝つ。同じ人数で Jira Standard を選ぶと、1,700回で止まり、Premium とアプリとアドミンに上がる。そのルートを「将来の拡張」と呼ぶのは正確ではない。料金表に最初から印刷されている階段だ。
非エンジニア比率が高く、承認付きワークフローが法令で必要なら、Jira Premium の選択は妥当である。その場合でも契約は Premium + Guard 前提 で稟議を通せ。Standard の $7.91 で全社展開し、期中に Premium とアプリを足すのが、最も高い買い方になる。
調達・情シス向け FAQ
Q1. Jira Standard の 1,700 回は1人あたりか。
サイト全体の合算。10名でも100名でも 1,700。1人あたりではない。Premium は 1,000回×有料ユーザーの合算。
Q2. Linear Basic の $10 でゲストと分析は使えるか。
使えない。ゲスト、非公開チーム、Insights、Asks、Zendesk / Intercom は Business。SAML は Enterprise。
Q3. 11名で使うなら年額はいくらか。
Linear Business は 11×$16×12=$2,112。Jira Standard は約 $1,044 だが自動化で足りず、Premium なら約 $1,919。Confluence と Guard を足すと Jira が上回る。
Q4. 無料プランで実務は回るか。
Linear Free は Issue 250 とチーム2。Jira Free は10ユーザー、自動化100、ストレージ2GB。検証以上の本番には向かない。
Q5. Jira から Linear へ移すとき、カスタムフィールドはどうなるか。
等価マッピングは無い。残すフィールドを5個以内に刈り、他は本文かラベルへ落とす。120フィールドの完全移行は、Linear 上に入力税を再実装する行為だ。
Q6. API で全件同期は可能か。
可能だが制限内が前提。Linear は 2,500 req/時と複雑度 10,000/クエリ。Jira はポイントとバースト。カーソル分割と差分、429 / RATELIMITED のキューが無いジョブは落ちる。
Q7. 途中解約とダウングレードは。
Linear の年契約は期間途中の返金なし。250件超で Free に戻すと新規起票が止まる。Jira の年契約も残期間の扱いが限定的。上げる前に四半期のルール実行数を計測せよ。
検証手順(稟議前にやること)
- 既存の Slack 通知、ステータス変更、PR 連動の 月間発火回数 を2週間測る。×営業日で月次化する。Jira なら 1,700 と 1,000×人数のどちらに入るかを見る。
- 実ユーザー、閲覧専用、外部ゲストを 権限別に数え、Linear なら Business 席、Jira なら製品シートと JSM の境界を分ける。
- 必須入力項目を現行ツールで数える。8を超えるなら、移行先でも同じ項目を必須にするかを先に否決する。
- SSO とデータレジデンシーの期限を確認する。12ヶ月以内なら Enterprise / Guard / Premium 単価で書き直す。
- API ジョブがあるなら、ピーク時の req/時と1クエリのネスト深さをログから出す。公式上限の50%を超えるなら、最初から上位プランか外部 iPaaS。
この5点が埋まらない比較表は、単価の並べ替えにすぎない。
まとめ
Linear と Jira Software の勝敗は「アジャイル対応の有無」では決まらない。決まるのは、起票秒数、自動化の月次上限、チーム数とゲストの解放段、SSO の閉じ方、Marketplace とアドミンの人件費、API の時間枠である。Jira Cloud Standard の月1,700回と必須フィールドの増殖は、製品の欠点というより課金と統治の中核だ。Linear は実人数課金と Git 同期でこの段差を回避できる一方、Basic の5チーム、ゲストの正席課金、SAML の Enterprise 閉じ、クラウド専用という別の請求・調達コストを持つ。
8〜80名で Git を軸に出荷するなら、Linear Business を主候補にせよ。200名超で JSM と監査フィールドが条件なら Jira Premium だ。Standard の $7.91 でエンジニア組織を全社展開する前提は、ルール実行枠と入力税がそれを許さない。
自社の人数、ゲスト数、月間ルール実行、必須フィールド数を入れて両ツールの年額を並べる作業は、SaaS比較シミュレーター で再現できる。稟議資料の「1人あたり」行の下に、自動化枠とアドミン人件費の行を足せ。そこが本記事の検証範囲である。
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