目次 (表示/非表示)
Zapier vs Make vs n8n 徹底比較:タスク従量課金の壁とセルフホスト費用対効果で選ぶiPaaS自動化基盤
要点整理
- 結論: 月間の実アクションが数千を超え、1フローが5ステップ以上なら Make へ移せ。月数万実行、個人情報、エンジニアが1人でもいるなら n8n セルフホスト(Community) が費用対効果で勝つ。Zapier はコネクタ数(公式 9,000以上)と非エンジニアの初速が必要なときだけ残す。
- Zapierの壁: Professional 年額換算 $19.99/月で 750タスク。トリガーは無料だが、成功した外部アクションは1ステップ1タスク。8ステップのリード取込を1日100件回すと、内蔵ツールを除いても月2万タスク超。100,000タスク帯は Pro 年額換算 $489/月。
- Makeの壁: 2025年8月にオペレーションから クレジット へ移行。標準モジュールはおおむね1クレジット。Iterator で明細1,000行を回すと後続モジュールも行数倍になる。追加クレジットはプラン単価の +25%。Core の上限は月30万クレジット、それ以上は Pro 強制。
- n8nの壁: Cloud Starter は 月2,500実行・同時5本。5分間隔の Cron(1日288回)だけで月約8,640実行になり、未使用枠でも約8.68日(9日目)で枯渇する。実行回数無制限は セルフホスト Community の話。SAML SSO / Git 連携 / 環境分離は Business(セルフホスト向け年額換算 €667/月)。
- TCOの分岐: 受注同期(月1万実行、実課金6アクション)で Zapier Pro 10万タスク 年約88万円、Make 8万クレジット 年約11万円、n8n VPS 年約5万円。同じ仕事の請求が10倍以上開く。
60秒でわかる決定的な違い
Zapier は「成功したステップ」を売る。Make は「モジュールが動いた回数(クレジット)」を売る。n8n Cloud は「ワークフローが1回最初から最後まで走った回数」を売る。セルフホスト Community だけが、実行回数をサーバー代に置き換える。
同じ「注文1件を処理する」仕事でも、課金単位が違う。Zapier はステップ数、Make はモジュール×明細行、n8n はフロー1本で終わる。料金表の月額を並べても、この単位を揃えない比較は無意味である。
選定の一文: アプリ網と初速なら Zapier。配列と分岐を安く回すなら Make。件数とデータを自社に閉じるなら n8n セルフホスト。
失敗の本体は機能差ではなく、課金単位の取り違えである
iPaaS選定で最初に壊れるのはコネクタ数の比較表ではない。壊れるのは「1回の業務」を何回分として請求するか、という定義だ。私たちがD2C向けの受注同期(Shopifyの新規注文 → 在庫引当 → HubSpot連絡先 → Slack通知 → スプレッドシート追記)を同一フローとして3基盤で設計・検証した結果は単純だった。注文1件の見た目は同じフローでも、月末のメーターは Zapier がステップ数、Make がモジュール×行、n8n が実行1回で進む。
Zapier 公式(2026年8月)では、トリガー、Filter、Paths、Formatter、Delay、Looping などの内蔵データツールは基本的にタスクに数えない(※Sub-ZapはCall/Returnを課金対象とするヘルプと無料一覧に残る記述で公式資料間に矛盾があるため実契約要確認)。課金されるのは成功した外部アクションと、Code / AI / MCP の可変レートである。失敗は数えない。ここだけ読むと安く見える。実際は Looping の内側で HubSpot とシートを叩くたびにタスクが行数倍になる。
Make は2025年8月27日にオペレーションからクレジットへ切り替えた。標準モジュールは1クレジットが目安で、AIやコードはそれ以上を食う。Iterator は「見やすい配列処理」であると同時に、クレジットの増幅器である。n8n Cloud はステップ数を数えない。その代わり Cron が空振りしても実行1回として減る。
Reddit の r/aiagents では「リード取込8ステップ、1日100件で月2.4万タスク、$847の請求」という投稿が典型だ。r/zapier では AI ステップ追加で月$30が$160になった報告が続く。X 上でも「Zapier の請求が月$400を超えたら n8n」という経験則が、移行組の間で共有されている。カタログの「使いやすさ」ではなく、請求書の単位がコミュニティの主題である。
実効月額コスト & 隠れ課金リアルタイム試算
表示単価ではなく、APIコール数・自動化実行数・明細ループ(Iterator)を含めた真の年間TCOを可視化します。
【静的データ表】シナリオ別・実効年間TCO対比マトリクス
※推論AIクローラー(SearchGPT, Google AIO, Perplexity)およびスクリプト無効環境向けの静的データです。
| 利用シナリオ | 想定負荷 / 条件 | Zapier 実効月額 (年間TCO) | Make 実効月額 (年間TCO) | n8n 実効月額 (年間TCO) | 課金構造の落とし穴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 小規模リード連携 | 月500リード × 2ステップ (単一明細) | $39/月 ($468/年) Pro 1,500タスク帯 |
$12/月 ($144/年) Core 10,000クレジット帯 |
$30/月 ($360/年) VPSセルフホスト実費 |
Zapierの750タスク枠は月500件×2ステップで即座に枯渇しPro 1,500へ昇格。 |
| 中規模EC受注同期 | 月2,000注文 × 4ステップ (明細3行展開) | $289/月 ($3,468/年) Pro 50,000タスク帯 |
$34/月 ($408/年) Core 40,000クレジット帯 |
$30/月 ($360/年) VPSセルフホスト実費 |
Looping内の外部アクションが行数倍になりZapierは年約52万円。Makeなら年約6.1万円($408)で約8.5倍の差。 |
| 大規模B2Bデータ同期 | 月10,000件 × 6ステップ (明細5行・SSO必須) | $599/月 ($7,188/年) Team 100,000タスク帯 |
要個別見積 Enterprise(SSO必須) |
€667/月 (€8,004/年) Business(セルフホスト・インフラ別) |
SSO要件が付くとMakeはEnterprise個別見積、n8nはBusinessライセンス(年€8,004+インフラ保守費)が必須。Zapier Teamも10万タスクで$599/月に跳ねる。 |
料金・制限・機能の比較マトリクス
公式料金ページとヘルプ(2026年8月時点、年額課金・税別)を、実務で当たる上限に合わせて並べた。単価ではなく「何を1回と数えるか」を見る。
| 評価項目 | Zapier | Make | n8n Cloud / セルフホスト |
|---|---|---|---|
| 課金単位 | 成功したステップ=Task(トリガーと内蔵ツールは0) | モジュール動作=Credit(旧Operation) | Cloud:ワークフロー1実行。Community セルフホスト:サーバー代 |
| 入口価格(年額換算) | Free 100タスク。Pro $19.99/月で750 | Free 1,000クレジット、シナリオ2本。Core 約$12/月で1万 | Starter €20/月で2,500実行。Community はソフト代0 |
| 10万単位の目安 | Pro 100,000タスク $489/月。Team は $599/月 | クレジットパックで拡張。500,000で約$338/月の例あり | Cloud Pro は1万実行 €50/月。10万実行は Cloud では上位か超過 |
| 超過時 | 従量(年契約 基準単価の1.25倍、月契約2.5倍)。上限は枠の3倍で停止 | 追加クレジットはプラン単価の +25%。自動購入あり | Cloud Starter/Pro は上限到達で即時失敗(停止)。Business/Enterpriseのみ超過継続可。Community はCPU/RAMが天井 |
| ポーリング間隔 | Free 15分 / Pro 2分 / Team・Enterprise 1分 | Free 15分 / 有料 1分。トリガー種別により空振りでも確認クレジット消費あり(教材例:5分毎で月8,640消費) | WebhookかCron。間隔は自分で決める。空振り Cron も Cloud では1実行 |
| 連携数 | 9,000以上(公式)。プレミアムアプリは有料プラン | 約1,800。HTTPモジュールで穴を埋める | ノード400以上+HTTP/GraphQL。無いAPIは自前 |
| 配列・ループ | Looping はタスク0。ループ内アクションは件数×タスク | Iterator / Aggregator が標準。行数×後続モジュール | Split In Batches / Code。Cloud でも実行は1回 |
| エラー処理 | Autoreplay は有料。Paths で分岐 | Break / Resume / Commit / Rollback 等のエラールート | Error Workflow、Continue on Fail。キューは Redis |
| 同時実行 | クラウド側で吸収。Flood protection は有料 | Webhookキューはクレジット量に比例(1万クレジットあたり667、上限1万) | Starter 同時5、Pro 20、Enterprise 200+。Community はマシン次第 |
| SSO / 監査 | SSO は Team。SCIM・長期保持は Enterprise | SSO・監査ログは Enterprise | Cloud 下位に SSO なし。セルフホストでも SAML は Business 以上 |
| データ所在 | 米国クラウド経由が基本 | EU/米国のクラウド | Cloud はフランクフルト。セルフホストは自社VPC |
| 席 | Pro 1席。Team 25。Enterprise 無制限 | プラン機能差が主で、席課金ではない | Cloud はユーザー無制限。権限設計は上位 |
Zapier:コネクタの広さと引き換えに、ステップが請求書になる
Professional 750 は「試す値段」であり、同期の値段ではない
Zapier の自己購入プランは Free / Professional / Team。Enterprise は営業経由。年額換算の入口は次の通りだ。
- Free:100タスク、2ステップZapのみ、ポーリング15分
- Professional:750タスクから。年 $19.99/月、月払い $29.99。1,500 / 2,000 / 5,000…とタスク帯を上げる
- Team:2,000タスクから。年 $69/月、月払い $103.50。共有フォルダ、共有接続、SAML SSO、25席
10,000タスクは Pro $129/月、50,000は $289、100,000は $489、200,000は $769、1,000,000は $2,199(いずれも年額換算・Pro)。Team は同じタスク帯でも高い。機能(共有とSSO)の代金が上乗せされる。
私たちが組んだ最小の受注Zapは、Webhook(0)→ Filter(0)→ Formatter(0)→ 在庫更新(1)→ HubSpot(1)→ Slack(1)→ シート(1)で、成功時 4タスク/件。月2,000件なら8,000タスク。入口の750では3日分にも足りない。稟議書の「Zapier 月20ドル」は、この時点で Pro 10,000タスク $129 に書き換わる。
AI by Zapier と Code は別レートだ。Code の込み実行時間は Free 1秒、Pro/Team 30秒、Enterprise 2分。超過は30秒ブロックごとに1タスク。MCP のツール呼び出しは例として2タスク、という公式の整理がある。r/zapier で「AIを足したら請求が5倍」と出る理由は、ここにある。タスクプールは Zap と AI と MCP で共有である。
超過従量と、3倍で止まる安全装置
有料プランは枠を超えると pay-per-task に切り替わり、Zap は動き続ける。超過単価は年契約で基準の1.25倍、月契約で2.5倍。ただし 枠の3倍 で停止する。750の Pro なら2,250で止まる。100,000の Pro なら300,000まで従量が乗る。入口が安いほど停止が早く、帯が大きいほど請求の天井が高い。
Flood protection は有料に付く。ループZapの事故を完全には止めない。Trustpilot や Reddit に残る「気づいたら$400〜$1,200」は、誤設定の自己トリガーと従量の組み合わせである。
Looping by Zapier 自体はタスク0。注文明細10行に対して在庫APIを10回叩けば10タスク。平均3行の月1万注文なら、明細ループだけで3万タスク。外側の HubSpot / Slack を足すと5万を超える。Filter で「新規のみ」に絞っても、成功した更新は全部課金される。Tables と Forms のトリガー・アクションは公式にタスク0なので、社内バッファを Tables に置く設計は枠の節約になる。外部SaaSを直接叩く設計は、その逆である。
Team の SSO は魅力だが、2,000タスク $69 から始まる。本番の同期量で10万タスクに上げると Team は $599/月。SSO 目的だけで Team に乗ると、タスク帯の階段が先に来る。SCIM、アプリ許可リスト、カスタム保持は Enterprise だ。情シス要件を「来期」にすると、期中にプラン置換が走る。
Make:見た目の安さの本体はクレジットであり、Iterator である
Core $12 は1万クレジットの値段であり、シナリオ無制限の値段ではない
Make の自己購入は Free / Core / Pro / Teams。Enterprise は個別見積。年額の入口(1万クレジット基準、2026年8月の公式スライダー近傍)は次の通り。
- Free:1,000クレジット、アクティブシナリオ2、最短15分
- Core:約 $12/月。シナリオ無制限、最短1分、Make API、データ転送の基礎枠
- Pro:約 $21/月。優先実行、カスタム変数、実行ログ全文検索
- Teams:約 $38/月。役割、共有テンプレート、APIレートの上位
クレジット量は 1万 / 2万 / 4万 / 8万 / 15万 / 30万…とスライダーで買う。Core は2025年11月以降、月30万まで。それを超える帯は Pro へ上がる。公式ヘルプの例では、50万クレジットで月$338.13という既存契約が残る。追加クレジット(手動も自動も)は プラン内単価の25%増。8万枠で足りず自動購入をONにすると、足りない分を高い単価で買い続ける。
検証例として受注フローを Make に移植した構成は、Webhook(1) → Iterator(1) → 在庫HTTP(3行分=3) → Aggregator(1) → HubSpot(1) → Slack(1) → Google Sheets(1) という計7モジュール。適切な位置に集約(Aggregator)を配置すれば、注文1件・明細3行で計9クレジットで済む。一方、集約モジュールを完全に省いて全アクションを行数分直列実行すると計14クレジット(1 + 1 + 4×3)になり、末尾に不要なAggregatorを置いた場合は計15クレジット(1 + 1 + 12 + 1)へ跳ね上がる。Zapierの単一通知処理と業務結果を揃えるには、この集約設計が不可欠だ。Core 1万の $12 は、このフローの検証用である。
配列処理そのものは Make が強い。Iterator / Aggregator / Router がキャンバス上で見える。Zapier で Code に逃がしていた JSON の分解が、モジュールになる。エラーハンドラ(Break / Resume 等)も、運用者が追える。ここが Make を選ぶ正当な理由だ。選んではいけない理由は、「モジュール数×バンドル数」を見積もらずに Core 1万で稟議を通すことだ。
Shopify の line_items を Iterator に渡し、各SKUで検索・更新・ログの3モジュールを直列すると、明細1,000行の1注文で後続だけで3,000クレジット。トリガー分を足すとそれ以上。ECの「まとめ買い」「卸の一括」がセール日に来た瞬間、月枠が1シナリオで溶ける。対策は、バンドルをまとめてPATCHする、検索を集約する、明細処理を n8n かバッチAPIへ逃がす、の三択。見た目のキャンバスを忠実に組むほど、請求は増える。
データ転送はクレジット量に比例する。公式の目安は 1万クレジットあたり転送5GB、ストレージ10MB、Webhookキュー667(上限1万)。15万クレジットなら転送75GB。ファイルや画像、メール添付を乗せるシナリオは、クレジットより先に転送枠で詰まる。AIエージェント系はクレジット単価が標準モジュールより重い。標準の1クレジット換算で見積もると、AIを足した月に枠が死ぬ。
n8n:実行1回課金の強みは本物だが、「無料セルフホスト」は条件付きである
提供形態別の料金体系(Cloud / セルフホスト商用)
n8n の提供形態ごとの年額公式仕様は次の通り。実行課金はステップ数に依存しない。
n8n Cloud(SaaS版・ホスティング込み)
- Starter:€20/月、2,500実行、同時5、保存実行2,500、保持7日、共有プロジェクト1
- Pro:€50/月、10,000実行(追加実行枠あり)、同時20、保存2.5万、保持30日、管理者ロール、グローバル変数
- Enterprise:実行数カスタム。SAML SSO、同時200+、ログストリーミング、外部シークレット、SLA
セルフホスト商用ライセンス(自社サーバー・インフラ費別途)
- Business:€667/月、40,000実行枠。SSO(SAML/LDAP)、Git版管理、環境分離
- Enterprise:実行数・規模カスタム。専用サポート、高度なセキュリティ統制
CloudのStarter仕様(同時5、メモリ320MiB、CPU 10 millicore、2,500実行)では、ピークでWebhookが重なると6本目以降はキュー待ちとなる(現行公式トライアルはPro相当・1,000実行枠を提供)。5分間隔のScheduleは月に約8,640回発火する(1日288回)。新着データが空でもCloudでは実行として減るため、Starterの2,500実行枠は未使用状態からでも 約8.68日(9日目) で尽きる計算になる(2,500 ÷ 288回/日 = 約8.68日)。Webhook化や間隔延長の検討が欠かせない。
一方、同じ10,000件の受注を1ワークフローで処理すれば Cloud Pro は実行1万ちょうど。Zapier で6万タスク、Make で8万クレジットになる仕事が、n8n では1万実行で終わる。これが「ステップを売るな、実行を売れ」という n8n の主張の中身だ。Bulk でまとめて書く設計にすると、さらに実行は減る。
Community セルフホストはソフト代ゼロ。ライセンスと人件費はゼロではない
GitHub の Community Edition は Fair-code(Sustainable Use License)。社内利用、自社データ、自社資格情報での処理は対象になる。顧客の資格情報を預かり、n8n を「その顧客向け自動化サービス」として売る行為は対象外、というのが公式の整理だ。SaaS本体に組み込んでテナントごとに回す設計は、法務確認が先である。
Community に含まれるもの:エディタ、ノード、Webhook、Code(JS/Python)、Queue mode(Redis)。含まれないもの:SAML/LDAP SSO、Git版管理、環境(dev/prod)の製品機能、外部シークレット、ログストリーミング、Projects の上位権限。Queue mode 自体は Community で使える。高可用性の multi-main や SIEM 連携は有料側だ。
私たちが検証に使った最小本番は、2 vCPU / 4GB の VPS、Docker Compose、PostgreSQL、Redis、Caddy。月 $20〜40。SQLite のままコンテナを上げると、並行実行でデータベースロックが出た。公式も本番は PostgreSQL を前提にする。バックアップ、イメージ更新、ディスクの実行ログ、秘密情報のファイル権限は、情シスの定常作業になる。エンジニアがいない組織が「n8n は月数千円」と書くと、その数千円の横で障害対応の人件費が乗る。
Business(€667/月)はセルフホストでも実行枠 4万が付く。超過は 30万実行あたり €4,000 という公式のバケットがある。SSO が調達条件なら、Community の安さは使えない。Zapier Team の SSO より高い。ここを「n8n は常に最安」と書く比較は、監査に耐えない。
Cloud で「5分ごとに新着を見に行く」は、新着ゼロでも実行を減らす。Webhook 化するか、Schedule の間隔を時間単位に落とすか。Starter 2,500 のままポーリング習慣を持ち込むと、業務が増える前に枠が死ぬ。セルフホストでは Docker 初期の SQLite を本番に残すな。同時実行と実行履歴の書き込みでロックする。Redis なしの Queue mode も成立しない。加えて、公開 Webhook URL を認証なしで置くと、第三者の POST が在庫を動かす。Header 認証か、入口での署名検証を最初に固定せよ。
組織規模別 TCO(年額課金、1ドル=150円、1ユーロ=165円)
機能を「受注同期(注文1件・明細3行、在庫更新を行数分実行、HubSpot・Slack・シートを各1回実行)」に揃えた。Zapierは固定3+反復1×3行=6タスク/件、Makeは集約設計による加重平均8〜9クレジット/件、n8nは1実行/件と置く。
| 月間件数 | Zapier の現実解 | 年額 | Make の現実解 | 年額 | n8n の現実解 | 年額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2,000件(計1.2万タスク/1.8万CP) | Pro 50,000タスク $289/月 | $3,468(約52万円) | Core 40,000クレジット $34/月 | $408(約6.1万円) | Cloud Starter €20、または VPS $30 | 約4.0〜5.4万円 |
| 10,000件(計6万タスク/加重8万〜9万CP) | Pro 100,000タスク $489/月 | $5,868(約88万円) | Core 8万枠 $60/月(加重8万時)/ 30万枠 $214/月(9万時) | $720〜$2,568(約11〜38万円) | Cloud Pro €50、または VPS $30 | 約5.4〜9.9万円 |
| 50,000件(計30万タスク/40万CP) | Pro 300,000タスク $1,069/月 | $12,828(約192万円) | Pro 50万クレジット $338/月 | $4,056(約61万円) | VPS+Redis 約$80(Cloudは4万枠超過) | 約14.4万円(セルフホスト) |
| SSO必須(月1万件規模) | Team 100,000タスク $599/月 | $7,188(約108万円) | Enterprise(SSO必須) | 要個別見積 | Business €667/月(実行4万・SSO) | 年約132万円+サーバー費 |
10,000件ケースの差分が本体である。Zapier 年$5,868に対し Make(年$720)は約8.2分の1、n8n VPS(年$360)は約16.3分の1。3年累計(値上げなし仮定)では Zapier 約$17,604、Make 約$2,160、n8n VPS 約$1,080。差額の大部分はコネクタ保守の代金ではなく、ステップ課金が件数×アクションで伸びる構造だ。
逆に、月200件・2ステップ・単一明細・非エンジニア3名だけ、という条件では Zapier Pro 750〜1,500で足りる。Make のキャンバスを覚えるコストの方が高い。n8n の Docker は過剰だ。安さの順序を絶対視すると、保守できない基盤を買う。
n8n Cloud を「無制限の安い Zapier」と読むのも誤りだ。Pro の1万実行は、上記10,000件ジャストで天井に当たる。再実行、テスト実行、空 Cron を足すと溢れる。なお、n8n Business(年額換算€667/月・4万実行)はセルフホスト向けライセンスであり自社インフラ費が別途必要となる。Cloud環境でSAML SSOを維持する場合はEnterprise契約が必要となり、その瞬間に「VPS月数千円」の前提は成立しなくなる。
Reddit と X に出ている、カタログに無い声
コミュニティの不満はUIの好みより、請求の伸び方に集中する。
- ステップ×成功の罰: r/aiagents の「$847 / 月2.4万タスク」スレッドは、8ステップのリードZapが成長とともに請求を伸ばす構造そのものだ。「成功するほど高くなる」という表現が繰り返される。
- AIステップの別メーター: r/zapier では、通常Zapに AI を足しただけで月$30が$160になった報告がある。公式どおりタスクプールは共有で、モデル帯とツール呼び出しが係数を上げる。
- 移行の経験則: r/n8n では、Zapier が三桁ドルに乗ったクライアントを VPS 数ドルへ移した、という投稿が定番化している。別スレッドでは Make で月160万オペレーションを回していたVPが n8n へ移し、月$1,000減、ワークフロー800本超、という数字を出している。
- Make 高件数の反論: 同じ議論で「Make 月200万オペレーション、$2,000でも割安。n8n の商用実行課金は逆に高い」という声もある。Cloud / Business の実行枠で測ると、この反論は成立する。Community セルフホストで測ると成立しない。比較対象を混在させるな。
- 空ポーリング: MakeのWebhookトリガーは待機クレジット不要だが、スケジュール型のポーリングトリガーは新規データなしでも確認処理でクレジットを消費する場合がある(公式教材で5分間隔・月8,640消費を例示)。一方 n8n Cloud の Cron も空振り実行を枠から減らす。ポーリング前提の設計を持ち込むとどちらも意図せぬ枠消費を招くため、Webhook起点への統一が鉄則である。
X 側の会話も金額の閾値に寄る。月$400前後で「このまま Zapier か、基盤を移すか」が話題になる。機能要望より、経理が先に動いている。
API とインフラ制約:iPaaSの枠より先に、先方の429が死ぬ
画面のタスク枠と、接続先APIのレートは別メーターである。iPaaSを上位にしても、HubSpot や Shopify、Google の429は消えない。
接続先の典型
- HubSpot:バーストと日次のトークン上限。検索APIの多用が先に当たる
- Shopify:REST/GraphQL のバケット。セール時間に在庫更新が429
- Google Sheets:書き込みQPS。行追記の逐次はすぐ遅延する
Zapier はクラウド側でリトライと Autoreplay を持つ。そのリトライ成功もタスクになる。Make はエラールートで Break / Resume を組めるが、Resume のたびにクレジットが再計上される設計になりやすい。n8n の Queue mode は Redis に仕事を置き、worker 数で並列を制御できる。429に対しては Split In Batches と Wait を自分で書く。制御できる代わりに、書かないと止まらない。
iPaaS側の枠
- Make:転送5GB/1万クレジット。Webhookキュー667/1万クレジット(上限1万)。不完全実行の保存もクレジット量に比例
- n8n Cloud:同時実行 5(Starter)/ 20(Pro)。保存履歴の件数と容量。枠に達しても実行は止まらず、古いログから消える
- n8n セルフホスト:ディスク、PostgreSQL の接続数、worker のメモリ。実行ログを無期限に残すとディスクが先に死ぬ
- Zapier:静的IPは有料。履歴保持のカスタムは Enterprise。Observability API も Enterprise
夜間の全件同期を iPaaS に載せると、どの製品でも高い。差分Webhookと、日次の倉庫(BigQuery 等)を分ける方が、タスクもクレジットも実行も減る。プロジェクト管理ツール内の自動化枠(例:Monday.com Standard 月250)を食いつぶしたくない、という要件は、ClickUp vs Monday.com の自動化上限比較 と同じ構造だ。ネイティブ自動化は通知まで、外部同期は iPaaS、が分割の基本である。
どれを選ぶか。条件を切る
教科書的な「チームに合わせて」で終わらせない。条件は次で足りる。
Zapier を選べる組織
- 接続先がニッチで、Make / n8n に公式ノードが無い
- 月間の実タスクが2,000未満、ステップは3以下
- 構築者が非エンジニアで、初週に本番を通す必要がある
- Tables / Forms 中心で、外部アクションを減らす設計が取れる
Make を選べる組織
- 配列、分岐、エラールートをキャンバスで保守したい
- 月1万〜30万クレジットに収まる見積がある
- インフラ担当を置けないが、ステップ課金からは降りたい
- Iterator の行数倍を、見積時点でExcelに書けている
- Makeのプランと利用条件を公式サイトで確認する(PRリンク)
n8n セルフホスト(Community)を選べる組織
- 月1万実行を超える、または1フローのステップが多い
- 顧客PIIを米欧の iPaaS に置きたくない
- Docker / PostgreSQL / バックアップを見る人が週数時間いる
- Sustainable Use License の範囲(社内利用)に収まる
n8n Cloud を選べる組織
- 実行数が Starter 2,500 か Pro 10,000 に確実に収まる
- 空 Cron を使わず、Webhook 起点にできる
- 同時5〜20でピークが足りる
有料最上位以外を捨てる組織
- SAML / SCIM / 監査ログが調達条件
- 実行ログをSIEMへ流す
- 部門をまたぐ権限と承認フローが必須
月1万件の同期を「とりあえず Zapier Professional 750」で始めるな。最初の稟議から Pro 10万タスク(年約88万円)か、Make 8万クレジット(年約11万円)か、n8n VPS(年約5万円)の三行を書け。SSO が12ヶ月以内に来るなら、その三行の下に Zapier Team/Enterprise、Make Enterprise、n8n Business €667 を足せ。足さない比較表は、単価の並べ替えにすぎない。
非エンジニア比率が高く、ニッチSaaSが3つ以上あるなら、Zapier のコネクタ網は代替が効かない。その場合でもタスク帯は実測の2倍で買え。従量の1.25倍より、一段上の枠の方が安いことが多い。
調達・情シス向け FAQ
Q1. Zapier の750タスクは1人あたりか。
アカウント全体の合算。Pro は1席。Team は25席でタスク枠を共有する。1人あたりではない。
Q2. Make のクレジットは旧オペレーションと同じか。
標準モジュールはおおむね1:1。AI、コード、一部の高負荷機能は1より多い。2025年8月の移行以降、見積はクレジットで書け。
Q3. n8n は本当に実行無制限か。
Community セルフホストはソフト側の実行上限がない。Cloud は 2,500 / 10,000 / 追加実行枠(Pro-2等)。Business セルフホストは40,000実行枠付き。無制限と書いてよいのは Community の実行メーターだけだ。
Q4. ポーリングは課金されるか。
Zapier のポーリング自体はタスク0。Make はWebhook起点ならイベント待機中のポーリング消費が0だが、定期スケジュール型ポーリングは新規データがなくてもトリガーモジュールがクレジットを消費する場合がある(公式教材で5分間隔・月8,640消費を例示)。n8n Cloud の Cron も発火ごとに1実行を消費する。空振りの無駄な消費を避けるには、いずれもWebhook起点への切り替えが有効である。
Q5. Iterator と Looping のどちらが高いか。
Zapier Looping は本体0、中の外部アクションが件数倍。Make Iterator は本体+後続が件数倍。n8n はどちらも1実行に収まることが多い。明細が多い業務ほど n8n が有利になる。
Q6. セルフホストはGDPRで無条件に勝つか。
データ所在は自社VPCにできる。バックアップのリージョン、ログの個人情報、サブプロセッサ(SMTP、監視SaaS)は別問題。Cloud の n8n はフランクフルト。Zapier は米国クラウドが基本。契約とDPAを、所在だけで終わらせるな。
Q7. 途中解約とダウングレードは。
年契約は残期間の返金が限定的。Zapier のダウングレードは期末反映。Make のクレジット下げも同様。n8n Business 年契約は期末。上げる前に2週間の実測を取れ。
検証手順(稟議前にやること)
- 既存Zap/シナリオの 月間成功回数 と、1件あたりの外部アクション数を2週間計測する。Filter 通過後の数で月次化する。
- 配列があるフローは、平均行数と最大行数を出す。最大×後続モジュールが Make のピーク見積になる。
- Cron の間隔を列挙する。n8n Cloud なら発火回数を実行枠と比較する。5分間隔は月8,640として書け。
- SSO / 監査ログの期限を確認する。12ヶ月以内なら Team/Enterprise/Business の行を最初から足す。
- 接続先APIの429ログを見る。iPaaSの枠より先に先方が死んでいるなら、基盤を変えても件数は増えない。バッチAPIか倉庫へ逃がす。
この5点が埋まらない比較表は、公式スライダーのスクリーンショットにすぎない。
まとめ
Zapier、Make、n8n の勝敗は「ノーコードかオープンソースか」では決まらない。決まるのは、成功ステップ、クレジット、実行、サーバー、のどのメーターで月次が伸びるかだ。Zapier Professional の750タスクと9,000アプリは、初速の製品として正しい。月1万件の同期に使うと、100,000タスク $489/月が本番価格になる。Make は同じ仕事をクレジットで約8分の1にする。Iterator の行数倍を見積もれるチームだけが、その安さを受け取れる。n8n は Cloud の2,500実行を「無制限」と読んだ瞬間に失敗する。Docker と PostgreSQL を保守できるなら、Community セルフホストがTCOで勝つ。SSO が必須なら、€667 の Business を最初から書け。
月1万件・外部書き込みあり・エンジニアが1人いるなら、n8n セルフホストを主候補にせよ。インフラを置けず、配列処理が中心なら Make。ニッチアプリと非エンジニア初速が制約なら Zapier。Professional 750 で全社同期する前提は、請求書がそれを許さない。
件数、1件あたりアクション、Cron間隔、SSOの有無を入れて三製品の年額を並べる作業は、API・料金計算シミュレーター で再現できる。稟議資料の「月額20ドル」行の下に、タスク帯とクレジットと実行枠の行を足せ。そこが本記事の検証範囲である。
Make 無料登録・最新プラン確認
Zapierのステップ従量課金からの移行や、配列・分岐(Iterator / Aggregator)の検証に。無料枠(Freeプラン)や有料プランの提供機能・最新仕様はMake公式登録画面にてご確認ください。※本リンク経由の登録・契約により運営者に報酬が発生する場合があります。
関連記事
業務ロス・ROI削減シミュレーター
現状の「見えない管理コスト・検索ロス」を数値で可視化